沖縄奇譚

短い期間、沖縄に住んだ記憶

プロローグ~始まり

1 沖縄へ
既に数年が経過してしまったが、「定期異動」を控えた自分に、そのオファーは唐突にもたらされた。人事担当者からの「沖縄、希望されていますよね…。」という事務的な提案は、東京に残っても思うようなポジションに異動できそうにない自分にとって、「そのほうがまだましか…」程度の選択肢であった。
これまでほんの少しの出張経験しかなく、観光もしたことがない土地であったので、「何が魅力か」はわからない。帰宅して、沖縄赴任という提案を妻にして、それなりの議論をした記憶はあるが、結果単身赴任で行ってらっしゃいということになり、翌日には上司に異存ない旨お話した記憶がある。
実際、これまで明確な単身赴任は経験がなかったが、子供たちはすでに一人前になっており、また妻も頼られる仕事を持っていたので、家庭的な心配はなかった。
こんな状況の中で、7月末、沖縄へと旅立った。多少の漠然とした期待と不安を抱いて…。

 

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羽田・出発


2 住まい
沖縄、と言っても誰もが想像する那覇市内に住んだわけではない。仕事の関係で中部東海岸の「うるま市」に社宅を借りて頂いた。

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うるま市の地図



そもそも、うるま市、という地方自治体があることすら知らなかった。どうやら有名な嘉手納町の隣で、「沖縄市」にも隣接しているらしい。沖縄市も知らない…。何も知らない事が自分自身かなり笑えたが、長い人生の中でここまで関心がなかったのかと思い、ここでの生活はきっといろんな発見がありそうだ…、と自分に納得させていた。
幹線道路近くの社宅は一人暮らしには広く、家族を呼んでも何ら問題ない大きさ(所謂3LDK)だった。以後、家族、友人などの沖縄観光の拠点となる住処だったが、南国の沖縄らしく「暖房」はなく冷房のみだった。これが後日厳しい状況をもたらすのだが、なにせ台風直下の8月の事、何の疑問もなく受け入れていた。

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うるまの浜辺

3 観光
赴任したあたりは確か那覇で大規模なエイサーが行われており、妻と娘がなぜか観光しに現れた。私が職場でなんやかんやしている間にいろいろとスポットを巡ったようである。

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国際通り・エイサー

その結論は、「所謂観光地はつまらない、行かなくともよい。」であった。要するに、最初から集客を目的とした観光施設は面白みがない、ということらしい。
ということで、本土に再異動するまでの間は、あまり「観光スポット」には行かず、どちらかというとニッチな場所を探す日々となった。役に立ったのは社会人の息子がくれたクロスバイク、これで北から南まで走破することになり、そこで見つけたこと、聞いたことがこの「奇譚」のソースになる。
ということで、ガイドブックにない沖縄、あまり人が行かない沖縄、のんびりできる沖縄を、地元の人々に聞いた話を交えながら紹介させていただこうと思う。

しばらくお付き合いいただければ幸いです。